第2章 尿膜管遺残症確定~入院まで(2018年4月5日~)
第2章は尿膜管遺残症確定から入院までのお話です。へその炎症を確認した前年の10月から5〜6ヶ月も経っています。
確定後は、入院と手術に向けて数々の検査、説明、書類記入が待ち受けています。
第8話 尿道から内視鏡を入れる日
2018年4月5日(水)
この世界が神の創造物であるのなら、今日という日も神の創造に違いない。
今日は運命の日。
内視鏡検査を受ける日。
その入り口は、尿道 尿道 尿道……(echo
聖書によると、最初の人類とされるアダムはイブが創造されるまで、一人だったらしい。そのぼっちだった期間が現代の時間間隔でどれほどなのかは定かではないが、アダムがちんちんの存在に気が付いて、ちんちんで遊ばないわけがないと私は思う。男の想像力をなめてはいけない。
神はなぜ、ちんちんを創造したか。
神はちんちんで、なにをしていたのだろうか。
その答えを、私は貴方に問いかけよう。
第1検査 尿検査・採血
まずは尿検査と採血だった。一番に終わらせたかった内視鏡検査が最後だと聞いてげんなりする。この不安を抱えたまま他の検査を受けなければならないのだ。
注射のチクッは何度経験しても慣れないな。
第2検査 レントゲン
リフトアップするベッドに初めて乗った。ちょっとわくわく。これも何事もなくあっさり終了。
第3検査 心電図・肺活量検査
身長と体重を計る。178cmと70.8kg。次に心電図。吸盤をくっつけた瞬間のあのひんやりが嫌いだ。そして肺活量検査。これやるのは初めてな気がする。いや、高校生の時にやったかな? 看護師さんの「はい吸ってー! 吐いてー!」の掛け声に合わせてひたすら吸って吐く。「まだいける!」とやり直しもさせられた。結構しんどかった。
第4検査 内視鏡検査
第3検査の後は泌尿器科の前へ移動した。第1検査からここまで30分少々。(いよいよ次か……)と思っている内に呼ばれてしまった。若い女性の看護師さんだった。(女性ですか……)と思いつつ診察室に入る。まだ心の準備もできていない。ベンチに座ってから5分くらいしか経っていない。
診察室に入ると左手にカーテンで仕切られた診察台があり、そこでズボンとパンツを脱いで、下半身にタオルを巻くように言われた。その診察台は検査では使用しないことはすぐにわかった。視線の先、カーテンの隙間からは、妊娠検査とかで使う椅子が見えていた。正式名称は知らないのだが、股を開いて座る椅子と言えばわかるだろうか。(あぁ、僕はこれに座るんだ……)と思った。
タオルを巻いた後、やはりその椅子に座るように指示された。診察台で横になってコチョコチョするようなかわいい検査を想像していた私はとても悲しい気分になった。この椅子の登場は全くの想定外だった。
◇ ◇
椅子に座ると、腰のあたりを境にカーテンで仕切られ、自分の下半身や周りの様子は見えなくなった。それからすぐ若い男性医師の声が聞こえた。どうやら検査をしてくれる先生らしい。女性じゃなくてちょっとほっとした。
看護師さんと私のことで少し確認の話をしたあと、先生の声がこちらに向いた。
医師「はい、平極さん。ではこれから、麻酔用のジェルを尿道から流し込んでいきますね。ちょっと違和感がありますよ」
さらっとすごく痛そうなことを言われた。一瞬、頭に「SAW」(映画)の世界が広がった。もう、力の抜けた返事しかできなかった。
麻酔用ジェル
カーテンで仕切られていたのでちんちんの感触からの推測だが、恐らくスポイトのようなものを使ったのではないかと思われる。まず無抵抗の息子がムニっとつままれた。つまんでいるのは先生の指だと思った。で、何かが息子の先端に当たったかと思った次の瞬間、息子の口から何かが流し込まれた。滑らかに入っていく感じではなく、ぐいぐいと押し込まれていく感じだった。予想に反して痛みはなかったが、ピリっとした刺激はあった。火傷とか水ぶくれのあとの、皮膚のない部分を触った時のような。人によっては痛みに感じるだろう。
嫌な感じが息子内部に広がり、それが竿の奥へ移動していく。これが2~3分続いた。で、ジェルを流し込まれた後、息子がなにかでグニっと挟まれた。麻酔が効いてくるまでしばらくこのままらしい。息子を挟んでいるのは力の弱いクリップみたいなもの? 多分だけど、息子の口からジェルが垂れないように圧迫するような役割の器具だと思う。カーテンの向こうからは医者と看護師の話がぼそぼそと聞こえた。精神的にしんどい時間だった。
放置された時間は体感だが10分くらいだったと思う。途中、息子の皮がぐにゅっとしてクリップの位置がズレるという珍事があった。これは看護師さんを呼んで直してもらった。
内視鏡挿入
しばらくして先生が戻ってきた。そんで検査の説明がなんとなく始まった。5話でも説明した内容だが、読み落とししてしまった人の為に改めて説明しよう。
なんで膀胱の中を見るかと言うと、尿膜管は管だから、膀胱の方まで管の穴が続いている可能性がある。つまり膀胱に穴が開いている状態。その場合、手術の時に管を除去するだけではなく、膀胱の穴も塞がなければいけないわけで、その有無は手術の前に確かめておいたほうがいいとのこと。で、今日この検査を受けることになった、というわけだ。
その説明が終わると同時にいよいよ本番の時がきた。
クリップ?が外されて、また息子がつままれた。そして先生が言った。
先生「では、これから入れていきますよ~」
直後、竿の先端に何かがあたり、その感触がぐんぐんと息子の奥へと移動していった。想像以上に早いペースだった。でも正直言って、拍子抜けするほど痛みも違和感もなかった。何かが入ってくる感じがするってだけ。麻酔ジェルってすごい、って思った。(お、これなら余裕じゃん?)と思った。
挿入から十数秒経ったところで先生が言った。「はい、細いところいきますね~。ここからがね、ちょっと辛いんですよ~」
次の瞬間、言葉にならない刺激が息子の奥で走った。たぶん竿の付け根から膀胱までを繋ぐルートだと思う。穴と内視鏡の直系がほぼ同じなのか、内視鏡の方がちょっと太いのか、周囲を擦りながら進んでいる状態がイメージできた。
痛くはなかった。人によっては痛みとして感じるかもしれないが、なんというか、私はただただ、笑ってしまったのだ。
私「ひょえぇぇぇ~~~ちょっと待ってwww うひょひょひょひょひょwwwこwwwれwwwっわwwwwwなんか、動いてるのがわかるwwwwww」
子供の頃に肩を揉まれてくすぐったく感じたあの指圧系の強い刺激? インフルエンザ検査の時に鼻の奥に細いブラシを突っ込まれた時の刺激? 痛みの種類はそれに似ている。ただ、その強さは10倍くらいだというだけで。くすぐったいような痛いのか、どっちかよくわからん刺激で気が狂いそうになった。
その刺激が続く状態のまま膀胱内の診察が始まった。私はカーテンのせいで見えなかったが、先生は内視鏡のカメラが送る映像をモニターで見ているようだった。内視鏡先端の角度がクニクニと変わる動作も膀胱から脳に伝わって来た。早く終わってくれと、ただ願うしかなかった。
ちなみに、この尿道に内視鏡を入れる検査だが、昔は麻酔無しだったらしく、あまりの痛みに患者が医師に対して裁判を起こした事例もあるとかないとか。
◇ ◇
先生の終了の言葉と共に内視鏡の管が抜かれた。ためらいのない勢いでズルッと引き抜かれた。その時も一瞬だけ苦しい感じが強まったけど、苦痛がピークになる前に全て抜かれたので、痛いとかそういう思いをしなくて済んだ。この抜き方も医師の腕や経験次第で変わってくるんだろうなぁと思った。
先生曰く、膀胱の中は綺麗で、穴も開いてないとのこと。で、しばらくの間はジェルが垂れ出たり、排尿の時に若干血が混ざったりすることがあると言われた。
私は心の中でしんしんと泣きながらズボンとパンツを履いて、診察室を出た。いろんな意味で汚された気分である。付き添ってくれた嫁に事のあらましを話した。
終わったあと
こうして検査はすべて終わり、会計をして病院を出た。今日の診察費は1万円少々。初診から今日まで、CTやMRI検査の診察費も合わせると3万円近くかかってる。保険で穴埋めできるが、貯えがなかったら大変なことになっていた。
このあとしばらくの間、おしっこの時にちんちんが痛かった。
恐らくジェルで尿道が詰まり気味になるのと、麻酔が切れたせいだと思えた。内視鏡の時と違い、これははっきりと痛みだと認識できた。激痛というわけではないが、排尿中は軽いズキズキとした痛みに耐えることになった。おしっこする度に痛みは弱くなっているので、明日には気にならなくなっているだろう。
次回は11日。
入院や手術の詳細を聞く。
第9話 入院・手術の説明と手続き
2018年4月11日(水)
今日の予約は14時半からで、入院や手術に関する説明を受ける日と聞いていたが、本当に話を聞いただけで、同意書などの書類の記入は次回の来院時にやるらしい。てっきり今日は書類への記入までやるものだと思っていた。
さすが総合病院。20分程度の話の為に、ベンチで2時間待たされるとは……。
その話と手術予定日の変更の話も聞いた。先生が参加する学会の日程の都合で、5月17日だった予定が5月29日になってしまった。ただでさえ遠かった手術日がさらに遠くなったわけだが、今は癌患者でさえ緊急でなければ二ヵ月待ちらしい。という、日数的には普通の長さですよ的な話も聞いた。
今日の話を聞いてわかったことをまとめておく。
・診断名は「尿膜管嚢胞」(にょうまくかんのうほう)※。※本書では「尿膜管遺残症」の名称を使います。
・難しい手術ではない。
・この総合病院(400床)でがん手術が年200人ほどであるのに対し、尿膜管遺残症の手術は年2名いるかいないか。
・極めて稀に癌ができるが、現時点ではその可能性は考えていない。
・入院中は相部屋でもパソコンは使ってもよいが、自己管理するように。
・手術後はちゃんと入院して、退院後も2~3週間の静養期間をとること。
次回はかなり日付が飛んで、5月16日。
今度こそ書類記入をするぞ。
2018年5月16日(水)
今日は麻酔と手術と入院に伴う説明と同意書のサインをしてきた。聞いてきた話をまとめよう。
・麻酔は全身麻酔で、背中から管を入れて背骨の中にも麻酔を打つ(怖い)
・その麻酔で死んじゃうこともある(怖い)
・手術は開腹式ではなく『腹腔鏡手術』。腹に穴を3つ開け、そこから器具を入れて処置をする。
・手術は2時間ほど。
・尿膜管が他の臓器と癒着していた場合など、切除に伴いやむ終えず他の臓器に穴が開く場合、入院期間が延びる場合がある。
・想定される出血量は50cc程度なので、輸血は用意しない。
・入院期間は通常なら一週間程度。
・大部屋(相部屋)にもテレビと小型の冷蔵庫がある。
・切り取った尿膜管は検査で使うから持ち帰れない(残念)
今日も14時半からだったけど、話を聞いていた時間は1時間もなく、残りはただの待ち時間。清算した時には17時半を回っていた。げっそり。
でもこれでようやく全ての話が終わり、後は入院日を待つのみとなった。
2018年5月27日(日)
いよいよ明日から入院だ。手術は明後日なのだが、手術に伴う前日入院という位置づけで明日から入院生活が始まる。
今日は自宅で入院に必要な書類を完成させ、入院セットを用意していた。尿パッドや腹帯など、Amazonで注文した医療品類は数日前に届いている。一週間程度の入院と聞けば短く感じるが、いざ準備していて気が付いたのは、これは7日間の外泊であるということ。やっていることは旅行の準備に近かった。
入院セットはキャリーケースに入れて持っていく。衣類、洗面用具、箸やコップなど、日用品は全て患者側が用意する。他、書類関係や筆記用具、iPadや充電ケーブル類はリュックに入れた。
気になるのは、『限度額適用認定証』というものがまだ届いていないことだ。通常、医療費は一旦全額支払った後で、自己負担額に応じた差額が払い戻されるのだが、この認定証を病院に提出しておけば、支払う時点で請求額が自己負担額に調整されているようなのだ。どっちにせよ支払う金額は同じなのだが、一時的であっても大きな出費は避けたいもの。これは必ず先に申請しておきたい。
尿膜管遺残症の診断書はとっくに会社に提出済である。その後の手続きは会社がやってくれるそうなので、あとは家に認定証が届くのを待つだけの状態なのだが、もしかしたら会社が手続きをし忘れてるのかもしれない。ちょっと前に会社の支社長が交代になったことが思い当たる。その際の引継ぎに漏れがあったのかもしれない。
念のため明日の朝、病院へ行く前に健康保険協会に電話して聞くことにした。