発達障害を依存症ととらえることにより、当事者の状態や症状の性質、発症機序だけではなく、改善方法も考えやすくなる。これも依存症からの回復方法を参考にすればよい。
まずなによりも依存要因との関係を断つことが要である。アルコール依存なら酒をやめること、ニコチン依存なら煙草を吸わないこと、ギャンブル依存ならギャンブルをしないこと。
発達障害の場合は「言葉」が依存要因なので、「脳が言葉を使わないようにすること」が回復の条件となる。言葉を話さないようにし、聞かないようにし、聞こえてこないようにし、読まないように、見えないようにし、思考でも使わないようにする。とにかく言葉や文章、文字を遠ざける。
これを達成すれば衝動性と麻痺は鎮静化する。が、期間は最低でも一ヶ月程度は必要だと考える。
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次は依存症に陥っていたせいで習得機会が得られなかった基本能力を獲得する。普通の人が日常の営みの中で習得してきたことであり、相応の訓練が必要である。
脳にちょうど良い感覚のピントを教え、叩き込み、矯正後は意識しなくてもピントがずれないまま機能する状態が望ましい。
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それとほぼ同時進行となるが、労働に従事して発達障害特有の困難が起きないことを確認する必要がある。検証精度を上げる為にもできればクローズ就労が望ましい。
ケアレスミスが頻発しない、コミュニケーションでトラブルが起きないなど、当事者特有の境遇に陥ることがないまま働ければ良い。
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ここまでできたとしても、また衝動性と麻痺が強まらないように生活する必要がある。その為にも、言葉の使用量を抑えた生活様式を送ることが要である。この社会で生きている限り言葉と関わらずに生きることは不可能だから、「使用量を減らす」という方針になる。
・テレビやネットの利用時間を少なくする(テレビはみなくていい)
・家族との会話は程々にする(一人暮らし推奨)
・食事は和食系で中毒性の低い料理を基本とする(ジャンクフード等は控える)
・酒や煙草には手を出さない。ギャンブルやゲームなどは適度にする。(脳の依存的働きを煽らない)
・仕事は言葉よりも体の動作で進める職種にする(オフィス業務は非推奨)
・規則正しい生活を心がける(不規則な生活は依存症を誘引する)
などなど、できることはいくらでもある。
アルコールの摂取量を気にするように、一日に使用する総文字数を管理するつもりでよい。
私はそうしている。
最も重要なことは休息と睡眠である。言葉や音が聞こえてこない静かな空間で、意識から言葉が抜けていく時間をつくること。「言葉を抜く」という部分だけならジョギングなどの運動も効果大である。
この「意識から言葉を抜く休息と睡眠」ができていなければ、あらゆる工夫は徒労に終わる。
発達障害者に休息と睡眠の重要性を指南する媒体はいくらでもあるが、この「意識から言葉を抜く」という点を強調している媒体はまだ見たことがない。それだけ発達障害が言語化されておらず、回復域に達したケースも少ないということだ。
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これが発達障害を治す方法であり、治せない理由である。
しくみさえわかってしまえば「風邪を治す」と同じ感覚で考えることができる。風邪を治した、と言っても二度とかからないわけではない。条件を満たせばまたかかってしまう、それが風邪である。
発達障害症状も同じなのだ。改善させることは可能だし、予防や対策を怠ればまた同様の症状を抱えてしまう。
しかし、ほとんどの人にとっては最初の「言葉を遠ざける」ことが無理難題だろう。
発達障害を治すとは、一般的な社会人の営みを放棄することに等しいのだ。