発達障害の正体は依存症④ — カリギュラ効果と意識の波について

 発達障害の境遇を理解する上で欠かせない観点がある。それが「カリギュラ効果」である。

 例えば「このスイッチを押してはいけない」と言われると、逆に押したくなる衝動が強まってしまう心理現象のことだ。

 誰にでも起こる現象であり、これ自体は正常な脳の働きである。

 しかし、発達障害者は衝動性と麻痺の働き方が強い為に、このカリギュラ効果の影響を受けすぎながら生きている。それ以外のことが考えられなくなるほど強まってしまうのだ。

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 私たちは教育の過程で社会通念や是非善悪、勉強や運動など、社会人として生きていく為に必要なことを周囲の大人たちから学ぶ。

 しかし、これらも強制されればカリギュラ効果の影響を受けてしまう。理屈上、したほうが自分の為になることはわかっていても、どうしてもやりたくなくなってしまうのだ。

 発達障害者の「やりたくない衝動」はもがき苦しむほど強くなる。社会通念に沿った通常の教育でさえ、反社会性を増幅させてしまうケースがあるということだ。

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 ここまで他者から命令されたケースを例えに話を進めたが、カリギュラ効果は自分の意識の中にある言葉からも発生する。

 「このスイッチを押してはいけない」と言われ、まずカリギュラ効果によりスイッチが押したくなる。ただそれで終わりではない。記憶にある「このスイッチを押してはいけない」の影響により、スイッチが押したくなる気持ちが更に強まるのだ。

 そしてまた「押してはいけない」と念じる。

 発達障害者は特性上、このカリギュラ効果のループは起こりやすい。まさに依存症状そのものである。

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 拒絶は受任、受任は拒絶と話してきたが、それは意識上の解釈であって、脳では別の現象が起きている。

 脳は見聞きしたものを全て取り込んでしまうのだ。

 例えば虐待を受けた子供が「自分は虐待をする親にはならない」と心に誓いながら生きたとしても、それは意識上の可否であって、脳はただ単に「虐待」に関する情報を取り込んで習性として覚えてしまう。それはやがて衝動となり、意識上で新たなカリギュラ効果を生む種となる。

 これが虐待を受けた子供が親になって虐待親になる経緯である。

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 カリギュラ効果によって生じた衝動は時間経過により鎮まっていく。しかし、また思い浮かべてしまったり、誰かから同じことを言われたりすると同様の衝動が発生する。

 この衝動が増幅せたり減衰する変化は砂浜に打ち寄せる波の引き寄せを参考にすると良い。

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 衝動性が鎮まる前に増幅が繰り返されると、その衝動は大きな津波となって意識を飲み込んでしまう。発達障害界隈にいる人には経験があるだろう。自殺願望や希死念慮もこの意識を飲み込む波のせいである。

 衝動性が強まるということは、それぶん麻痺も生じているということ。簡単なことがわからなくなり、生活する為の思考もできなくなってしまうのだ。

 そして最終的に生き方がわからなくなるのである。カリギュラ効果は普段は気にしないことを気にしてしまうのだ。

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 カリギュラ効果によって生じた意識は、果たして自分の意識と言えるのか?

 答えはノーである。

 発達障害者はその特性と境遇故に、普通の人よりも注意や命令、自問自答など、衝動性が煽られる言葉を多く受けながら生きることになる。いわば当事者の常態とは、脳という「他人」に意識の主導権を奪われている状態だ。

 そんな「短命の人格」に、人生を委ねてはいけない。



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