発達障害の改善を試みている時に困るのが「なにを以って改善とするか」だ。
開頭して脳の状態をチェックできるわけでもないし、脳波を参考にするとしても、時間やお金がかかってしまう。そこまでできたとしても、見るべきところはどこなのか。
どれだけ改善できたと思えても、周りから見れば改善できていないのかもしれない。
そこで基準にできる要素が「症状の発生頻度」である。
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例えばケアレスミスに関して言えば、この症状の当事者なら大体どれくらいの頻度でミスをしてしまうかをなんとなくでも覚えているはずである。
私の場合、症状に振り回されていた頃は「ほぼ毎日なにかしら最低1回はミスをする。多い時は2〜3回」といった感じだった。
1として扱うミスの水準は人によるだろうが、皿を割るなど元に戻らないこと、謝罪や反省が必要なこと、管理者から注意を受けること、誰かが予定外の時間を使って対応する必要があるなど、周りの人が頻繁に起こさないことはミスとして計上してもいいだろう。
これが限りなくゼロにな理、それが一定期間維持されていれば、「ケアレスミスは改善できた」と判断できるわけだ。
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頻度基準はコミュニケーションの改善具合を考える時にも使える。
私の場合、学生の時なら誰と話していても、いつかは怒らせて嫌われてしまった。いつ何時も関係の悪い誰かが身近にいる状態だった。ほとぼりが冷めてもその頃には別の誰かと揉めている、というわけだ。
中2の時にいじめ体験を通して言動を自重するようになってからは、対人トラブルの頻度は減ったが、「誰とも揉めていない期間が年に何度かつくれるようになった」だけで、根は変わっていなかった。
高校中退後に家業へ就職した後、平日の夜は他所でアルバイトをすることになったが、そのバイト先でも同僚と対人トラブルを起こしてしまった。
これが、オンラインゲームを利用してコミュニケーション訓練をするようになってから少しずつ変わっていった。「一ヶ月誰ともトラブルを起こさない」という目標を意識してプレイすることにしてから、対人トラブルを起こさない期間が二ヶ月、三ヶ月、と伸びていったのだ。
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私が過去に勤めていたデバッグの仕事でも頻度は基準になっていた。その不具合は同じ操作をすれば絶対に発生するのか、それとも頻度があるのか、それは何回中何回発生するのか。
バグが修正された後も、元々の発生頻度と比較した上で修正の成功可否を判断した。100回やって1回しか発生しない不具合は、100回200回と同じ手順で操作をして、本当に不具合が修正されたかどうかを判断したものだ。
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発達障害も診断の根拠として注目されることが「症状発生の頻度」である。実際、DMS(精神疾患の診断・統計マニュアル)でも発達障害や依存症の診断基準にいは頻度が採用されている。
このように改善の根拠として頻度を基準にすることは全くおかしくないのである。