コミュニケーション訓練の為に、インターネットを始めた

 家の中にいたまま他人や社会と関わる方法として目を付けたのが、インターネットの世界でした。当時(2001年)は今ほど家庭にネットが普及しておらず、ネットの導入やその後の設定などは、回線申込を謳うテレビコマーシャルやチラシなど足掛かりに、ほとんどは独学で進める必要がありました。

 私は当時1万円で買えたSEGAの『ドリームキャスト』というネット機能を搭載したゲーム機と、そのハードの人気オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン』に目を付け、そこからネットの世界へ飛び込みました。

 私はネットの世界で自分の分身となるキャラクターを通し、改めて普通の人になる為の道を追求することにしました。

 まず、〝思ったことを正直にそのまま話して交流する〟と決めました。チャットする時も掲示板に書き込む時も、普通の人を意識してではなく素の自分で振る舞ったのです。そうしたことで、ネットゲーム上でさえ人間関係はぐちゃぐちゃになり、掲示板では色んな人から叩かれたり注意を受けました。そして私 はログを頼りに、自分の発言のどこからがどんな風におかしかったのかを検討しました。口頭会話では言葉の内容が記録に残らないので、デジタルのログ機能はとても頼りになりました。

 私の意見に賛同してくれる人はいましたし、友達もできました。でも当時は気づけませんでしたが、その中にはメンヘラ系だったり困った人も多かったです。自分もそっち側の人だったわけです。

  自分がどれくらい普通になれたかを確認する方法は、トラブルを起こしていない期間を参考にしました。普通の人にも変な人はいますし、対人トラブルは避けられません。でも普通の人は毎日のようにトラブルを起こしません。当時の私はその点を基準に、トラブル頻度を参考に自分の普通の人レベルを推測することにしたのです。

 まず「一ヵ月、誰ともトラブルを起こさない」という目標から始め、それが達成出来たら二ヵ月、三ヵ月と伸ばしていきました。もちろんちゃんと毎日ログインして遊びました。 それが半年を超えたあたりから、トラブルになるような振る舞いやその前兆がなんとなくですが察知できるようになりました。

 この頃から「場の空気」がおぼろげながらも感じ取れるようになってきたんだと思います。その実感が確かなものになった頃、今度はゲーム内でチームを作り、チームリーダーという立場での検証を試みました。その後もいろんなドラマを通してコミュニケーションと向き合い続けました。

 最初の頃は感情的な言い方しか出来なかったのですが、少しずつ、文通のように相手の言葉の内容に対応したやりとりができるようになっていきました。

タイトルとURLをコピーしました