【おすすめ】フラッシュバックのことはゲップやおならだと思って気にしないことにした

 発達障害者の人生は一難去らずにまた一難。人間関係や仕事において、ありえないことをしてしまい怒られたり、悲しんだり、後悔するといったことを繰り返しながら生きています。それらの体験がフラッシュバック化すると、その時のストレスが突発的に意識全体を覆い隠してしまったり、奇声や過呼吸、吐き気を催すといった症状に悩まされることになります。

 この症状を抱えていない人の為に補足すると、例えば会議中や接客中などに、突然過去の記憶が意識全体に浮かび上がって、その瞬間は周りで起きていることを脳がスルーしてしまい、大事な話を聞き逃してしまったりするということです。

 症状が強い場合はそこに奇声や過呼吸、吐き気などの心身不調が加わります。私はこれを『過去に襲われる症状』だと思っています。

 私もフラッシュバックのネタはたくさん抱えており、今もこの症状と一緒に生きています。最初に症状が表れたのはたしか20代後半で、上でお話しした通り、意識全体が過去の記憶に奪われて周囲で起きていることが認識できなくなったり、「わにゃ!」とか「あぎょ!」とか、変な声が出てしまうこともありました。

 現在は自身の発達障害考察の持論に基づいて、この症状を緩和させることに成功しています。前著でも詳しくお話ししたことですが、この類の〝意識のエラー〟は我慢したり禁止したり拒絶したりすると脳の『カリギュラ効果』により悪化します。

 カリギュラ効果とは「このスイッチは押してはいけない」と聞くと逆に「押したくなる気持ち」が強まるように、「禁止されると逆に強まってしまう脳の働き」の総称です。これ自体は脳の正常な働きの一つですが、発達障害者はこの働きが強い為、特に気を付けなければいけません。

 お酒を飲めばアルコールの影響で、自分の気持ちや意思の決定とは無関係に人は酔ってしまうわけですが、発達障害者にとって「言葉」や「気持ち」はアルコールに相当するくらい、脳の働き方に影響を及ぼしてしまうのです。だからいろんな精神疾患を抱えやすいのです。

 フラッシュバックはこの〝「過去に襲われる症状」と、拒むことにより症状が増強される「カリギュラ効果」が組み合わさることにより脳に定着した症状〟と考えてください。だからフラッシュバックが起きても「ダメだ」「嫌だ」「あぁ、また……」などと思わず、気にしないことが対処法です。前兆無しに出ちゃったゲップやオナラのように思っておけばいいんです(笑)

 この向き合い方をするようになってから、フラッシュバックの頻度はわずかずつ減り、今では意識して思い出さないと、前回のフラッシュバックがいつだったかが分からないくらいには、自分の日常から遠ざけることができました。

 たぶん一生完治しないと思いますが、生きていれば誰しもが抱える類の症状だとも思うので、これくらいなら平気です。症状が重い人には通用しないかもしれませんが、私のように症状が軽い人ならこの方針をお勧めします。「気にしない」ができない、わからないという人は、手っ取り早い方法として視界の情報に注目することをお勧めします。視界になにが見えるか、目の前になにがあるか、10秒くらい追って確認してみてください。寝る時にヒツジを数えるように、ただ無心に。

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 私たちは生活や仕事の中で自分や他者に対し、お願いをしたり命令をすることがあります。「~をお願い」「~をやって」「~をしてはいけない」などなど。そういった意思の決定に関わる言葉や手段は沢山ありますが、その内容を受けた時の脳の働き方は想像するしかありません。カリギュラ効果はその習性を考察する上でとっかかりになってくれます。

 例えば――

・不倫。禁じられた恋愛はなぜ燃え上がるのでしょうか?

・ギャンブル、酒、たばこがなかなか止められない衝動は、禁止を強要する意識から生じているのではないでしょうか?

・痴漢や万引きを禁止する啓発ポスターは、もしかしてその衝動を増強させてしまっているのではないでしょうか?

・虐待を受けた子供が大人になってから虐待親になってしまうケースも、「自分は絶対に虐待をしない!」などと念じる意識が、カリギュラ効果により〝虐待してしまう意識〟となって根付いてしまったと考えることができます。

・子供に勉強を強要したり、テレビゲームを禁止する教育が精神育成に与える影響は?

・事件の容疑者に発達障害の診断が下った際、障害者に対する偏見云々の声が挙がりますが、当事者が反社会的な解決手段に至った背景を推測する上で、カリギュラ効果は欠かせないピースとなるはずです。

 この衝動性の働きは、発達障害の発症要因とどこかで繋がっていると私は考えています。

 ただ本項ではカリギュラ効果のことを「禁止されると逆に強まってしまう脳の働き」と説明しましたが、実際には禁止云々関係ないと私は思っています。「右だよ」と言われた時に反射的に「左」と選択してしまうとか、AとBがある時にAを選ぶことがわかっているのになぜかBを選んでしまうとか、当事者の読者さんにはそういう経験ないでしょうか。別に禁止されていなくても、意識が逆向きになる現象は起きてしまうのです。

 これについて私は、〝言葉を使った時点で脳に何らかのエラーが起きている〟と想像しています。

 いずれにせよ、これらの考察から「自分はどうするか」に繋げていくことが大切です。「なぜ?→なぜなら」と考えた後の段階です。

 本書からは、発達障害者には「禁止や強要になるべく頼らない生活様式」を推奨します。自分に対してはもちろん、他者に対してもです。私自身、最大限に気を付けていることです。

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