【褒めた?】一郎さんの気持ちについて、私的解釈【怒った?】

 特設ページで実施している『一郎さんの気持ちは?』の解説を本記事にて行います。まだやったことのない人は一度以下ページをやってから戻ってきてくださいね。

 次の文を読んで問いに答えなさい。

一郎さんと花子さんは、味がよいことで評判の高級レストランに入りました。ところがレストランは人でいっぱい、なかなかボーイさんが注文を取りにきません。三十分くらい待たされてやっとボーイさんがやってきました。ところがこのボーイさんは態度が悪く、三十分も待たせたのに、まったく詫びる気配もありません。

一郎さんはボーイさんに言いました。
「さすがは高級レストランだね」

最後の言葉を言った一郎さんの気持ちは次のどれでしょう?

(1)待たせても謝らないボーイさんの態度に感心した
(2)高級レストランらしいボーイのふるまいをほめた
(3)ボーイさんの態度に腹を立てた

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【心の理論】一郎さんの気持ちは? | HYOGOKURUMI site
一郎さんの気持ちを考えてみましょう!

 


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解説を読みたい人はここをクリック 回答後に読んでね♪

 
 どの回答でも間違いではありませんが、社会通念に沿った回答は(3)です。
 即答で、(3)だとわかる問題です。

 なぜなら、一郎さんは怒っているからです。(1)か(2)で回答した方は、自分の気持ちで答えてしまったのではないでしょうか? それが、自閉症傾向を持つ人によくある特徴なのです。

 ひっかけかな?と思って(1)(2)で答えた人でも、「普通は(3)でしょ」ということがわかっていればOKです。

 以下、ポイントとなることをお話しします。

一郎さんの気持ちを考えましたか?
 問題をもう一度、よく読んでください。これは、一郎さんの気持ちを答える問題です。「あなたの経験則に基づく、自分ならこう思う」で答える問題ではないのです。
 社会では常に相手の身になって考えられることが求められます。それは多くの場合、「相手の身になって考えるように」とは提示されていません。なぜならそれが、常識だからです。

 普通、30分もほったらかしにされたら不快になります。この問題に対する考察は、それだけでいいんです。だから(3)なのです。「私なら怒らない」じゃ、ないんです。
 もしかしたらあなたは、30分もほったらかしにされたら普通は怒ることが想像できないのかもしれません。飲食店というものは、水とおしぼりくらいはすぐに出してくれるのが普通で、どうしても時間がかかる場合は入店時にお断りがあるものです。なんの断りもなく水とおしぼりすら出されずに放置というのは、実際にそういうスタンスのお店があるかどうかは別として、あまり普通ではありません。

一郎の人物像を「普通の人」で想像しましたか?
 一郎さんの人格をあれこれ想像するのも間違いです。この問題には一郎さんの性格について何も書かれていませんし、「一郎」は「太郎」と並んで書類の記入例に用いられるくらいの仮名の代表的名称ですから、「普通の人を想定してね」という記号なのです。だからこの問題は名前の時点で、「普通はこう考えるよね、で回答すればよい方針」が暗に示されているのです。

空白の30分について
 一郎さんと花子さんは待たされている間、なにをしていたのでしょうか? これが小説かなにかの文章であればただの情報不足ですが、「30分も待たされた上に態度の悪い接客を受けたという、それだけの設定で考えてくれればいい」という問題の主旨を示しているということです。
 もし正解を言い当てる為に空白の30分間について理解する必要があるとすれば、この問題文は回答者に対してフェアではないと指摘できます。何も書かれていないからです。逆に、その書かれていないことに関する情報を持ち出して考えることは、問題に対してフェアではないと言えるのです。それは問題の不出来に対して難癖をつけているにすぎません。だから、実際を想定した状況を考える必要はないのです。

20年くらい前の私の回答
 初めてこの問題をやった時は発達障害のことについて知ったばかりで、診察すら受けていない状況でした。グレーゾーンという境遇です。
 私もまず(3)を真っ先に除外しました。理由は、(3)が正解であると選択することが、人のことについて考える上で、よくない姿勢だからです。

 (3)は、一郎さんが不愉快になった気持ちを表しています。これを一郎さんの気持ちだとして選ぶことは、一郎さんに対する否定であり、人が人を判断する時の望ましい姿勢から反することになるから、(3)を選ぶと間違いになる、という解釈です。

 まだ伝わっていない人もいるかと思いますので、今度は例え話をしますね。ここに相手(誰か)の写真が3枚あるとして、そのうち2枚が普通、1枚が不細工に写っていたとします。相手の顔はどれですか?と聞いて、わざわざ不細工な写真を選びますか? おや、貴方の隣の人が、どうみても不細工に写っている写真を選びました。貴方はその人に対してどういう印象を持ちますか?

  では、話を戻しましょう。(3)を選ぶということは、一郎が腹を立てているタイミングを指して、これが一郎だとして回答することになるのです。「不愉快になっている時」という、他者の目から見て良い印象とは映りにくい都合の悪いタイミングを指して、これがこの人であると言うわけです。それは当時の私の感覚からいって、ありえないことでした。頭の中では「心無い考え方」に分類されていました。

 で、その後で、(1)か(2)のどちらになるかを考えました。考えるために、問題文を何度も読み返しました。しかし、どう読んでも褒めたり感心したといえる情報が見当たりませんでした。でも答えとして(3)はありえず、(1)か(2)のどちらかしかないのですから、そのまま一時間くらい考え続けていました。考え続けていたといっても、一郎さんがボーイに「さすがは~だね」と言った状況を映像としてイメージしては、ただただその状況に違和感を感じるばかりでした。

 つまり、問題文は全く基準になっていなかったということです。(1)か(2)を選んでしまう人の心理の一例として、これはよくあるほうだと私は思います。

 その後、結局(1)(2)のどちらかを選ぶことができなかった私は、解説部分を読みました。そして驚愕しました。普通は(3)だと書いてあるではないですか。そして解説部分を読んで、一郎さんが不愉快になっていることを軸として考える問題であることをやっと理解しました。同時に、小学生の頃から国語のテストで、読解問題が全く理解できなかったことを思い出しました。問題の主旨や意味が理解できていなかったのです。

おわりに
 人ととして、という広い観点で言えば、別に(1)と(2)でも間違いではありません。好きに生きてください(笑) でも、この現代を生きる社会人としてはリスクがあります。生き辛さを感じたり、職場では周囲を困らせてしまうこともあるかと思います。

 考え方を変える必要はありません。ただ知識として、普通は怒る。だから答えは(3)になる、ということを知っておきましょう。

 この問題は自閉症や発達障害といった、障害界隈だけで活用するのではなく、もっと広く、一般論や他者との関わり方についての感覚の探る上で、題材にしやすい問題だと思います。ご関心を持ってくださった方は、ぜひ友達同士やご家族、職場などでやってみてくださいね。

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