スモールステップとビッグステップを使い分けよう!

 発達障害と聞くと「天才」というイメージをもたれる方がいますが、現実的には学校の環境が合わないために一般レベルの学力すら習得できないまま大人になり、運動も学力も器用さもない、パワプロなら全部❌みたいな社会人になるだけです😭

 今回の記事では、そんなリセット待ったなしの当事者が人生の再起をかけて努力をした末に辿りやすい成長ルートと、その先にある罠と対策についてお話しします。

 今回はASD寄りの記事になるのでそこんところ、ご容赦ください。

 


スモールステップを習得する

 学校の勉強などでつまづいた発達障害者が社会人になってから努力をした末に、最初に獲得する習得方式として多いのがスモールステップです。スモールステップとは、一つの大きな目標を簡単な目標に細分化して小さな達成を積み重ねやすくし、最終的に目的のゴールを達成するという実現手法です。

 例えば、半年後の国家試験に合格したいとします。たくさん勉強をしなければなりませんね。基礎習得力の乏しい人には、特に序盤のあたりが挫折ポイントとなるでしょう。

 そこで、「勉強は一日10分だけから始める」「一日5問から始める」など、簡単なことを日々の目標設定にして挫折せず努力継続しやすくする、という感じです。

 スモールステップはアメリカの心理学者「バラス・スキナー」が提唱した学習プログラムですが、発達障害者にはこの勉強方式を自力で確立した人も多いと思います。かくいう私もその一人です。

 できないことをできるようにする過程で、自ずと再現性を維持することが要であることに気づき、その術を探っていくうちに、「わからないことは細分化して、わかるところを増やす」「短時間なら集中できる」「毎日取り組むのが大事」といったことに気づきます。

 その小さな知恵の集大成として最初に確立されやすいのが、このスモールステップだと私は思います。

 スモールステープはコミュニケーション面でも助けとなります。それまで言葉が出てこなかった場面でも、わかること・わからないことが区別しやすくなり、必要な質問や応答に繋げやすくなるからです。

 それに、自信にも繋がります。私も勉強はからっきしダメでしたが、この勉強法式のおかげで国家資格のITパスポートに合格できました。

 

スモールステップは万能ではない

 こう聞くとわりと万能のようですが、実はそうではありません。自習には向いていますが、特に労働に向いていないのです😭

 以下は、職場での状況をイメージしながらお読みください。

 

全体を捉えた行動・判断ができなくなる

 細分化して捉えることが普段の思考回路になるので、全体をとらえた判断、行動が取れるまでに時間がかかります。というより、できなくなる、といった方がいいでしょう。

 朝礼でも業務内容の把握でもなんでも、せっかく全体を伝えてくれているのに、鼻から全体を把握しようとせず、自分のわかる部分を探すことに注目していたら、わかるものもわかりません。

 ハンドワークや肉体労働でも悲惨なことになります。例えば、自転車に乗れない人が、スモールステップの考え方で乗れるようになると思いますか? 普通に考えれば、ハンドル操作やペダルを漕ぐ動作、バランスの感覚を別々に認識してしまっているうちは、乗れないままだと思います。

 この習得方式は、身体を使う仕事でもネックになってしまうわけです。

 

コツコツだから遅い

 スモールステップは、石橋を叩いて確認しながらのような進行となる為、単純にいって遅いんです。

 周りの人もスモールステップでやってるなら目立たないかもしれませんが、例えば一般就労での戦力が求められるような立場では、苦しくなるでしょう。

 スモールステップしかできないなら、面接時に配慮事項として伝えたほうがいいでしょう。

 

「わからない」がわからなくなる

 スモールステップは自分のわかるところにいち早く取りついて、わかるところを広げていくスタンスです。

 別の見方をすれば、わからないところは後回し、というわけです。

 これが組織で業務を進めていく職場においてはネックになることがあります。わからないことがあるはずなのに周りを頼らず自己完結して進めていく、しかも遅い、そんなスタッフがありがたがられる職場はまぁないでしょう、

 スモールステップはあくまでも、スタンドアローンなやり方なわけです。

 

言葉の使用量が増える

 これが最も深刻です。一歩一歩、言語化しながら開拓していく進行になる為、どうしても言葉の使用量が増えるわけです。言葉は非物質依存として扱える為、脳の依存性を強め、否応なしにパフォーマンスを落とします。

 自由な判断で休憩しながら継続できる自習ならいいですが、これを業務能力と勘違いしていると、職場で辛い境遇に陥るでしょう。

 

対策

 覚えたこと、わかったことを、感覚に落とし込むフェイズがどこかで必要なのです。これは拙著『発達障害考察本: 31歳までグレーゾーンだった私がやってきた改善法』でもお伝えしたことですね。

 わかってることはいちいち考えず、感覚的にやればいいのです。

 スモールステップを自力習得したり、スモールステップのメリットばかり強調した解説を読んだ人はここが抜けています。

 難しく考えず、「歩ける」なら「じゃあ走ってみる」という軽い感じで、思考を使わずに体の感覚で実行できる感覚を、どこかで養うフェイズをつくってみましょう。

 これはスモールステップに限らないことです。

 一般の受験対策の話でも、単純な計算なら数値を見ただけで瞬間的に答えの値が頭に浮かぶようになど、人間の感覚を活用した攻略法を身につけることは、ステップアップの基本です。

 感覚的にできるようになれば、結果的に言葉の使用量も下がり、パフォーマンスを落とさずに再現性を維持しやすくなるわけです。そうして業務遂行の精度を維持できれば、側から見れば、定型水準と大差のないレベルになるでしょう。

 

まとめ ビッグステップ用にコンバートしろ

 まとめると、スモールステップでできたこと、わかったことは感覚的に体得しろ、ということです。変換(コンバート)といってもいいかもです。

 スモールステップはただの習得手法にすぎず、その真の課題は、ビッグステップで活用できるように、自分でコンバートしやすい感覚を習得することにあると言えます。

 ここまでできて、初めて定型社会の競争の中で勝負ができるのです。

 思考でできるようになったことを、感覚でできるようにする。それはただ「できる」だけの人ではなく、「任せられる人」になるということです。

 思考から感覚へのコンバートの方法は、一人一人答えが違います。ほぼほぼ手探りになるでしょう。でも、今までの人生の中で、意識していなかっただけで実現してきたことがたくさんあるはずです。例えば箸の持ち方がそうですし、上で例にあげた自転車の乗り方だってそうですよね。

 頭を使わず、感覚的に実行できていることから、コツを探してみてください。

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