全人類がアルコール依存症の惑星を想像してみよう

発達障害考察本外伝7 “No Word, No Life”
これまで私は自分自身の経験的療法に基づく発達障害の改善法をお伝えし、その考察の集大成として発達障害依存症説と、発達障害の治療用デバイスも考案しました。  本作では発達障害依存症説の根底にある、人間の人格は依存症の産物であるという捉え方をもと...

 本作、考察本外伝7をきちんと理解してもらうために必要な話はなんだろう? と考えた末に、読者の皆さんにはまず、これからお話しする架空の惑星を想像してもらうことにしました。

 ちょっとだけ想像力を働かせながら、これからのお話をお読みください。

 


全ての水分がアルコールでできている地球そっくりな惑星

 宇宙のあるところに、地球そっくりな惑星がありました。生き物の姿も文明レベルも、ほとんど全てのことが私たちの地球とそっくり同じで同レベルだとしましょう。

 あなたは宇宙船にいて、宇宙からその惑星を観察している立場です。

 その惑星には1つだけ、私たちの地球とは絶対的に違うところがありました。なんとその惑星は、大気の成分や、生きていく為に欠かせない水といったあらゆる水分が、アルコールの成分でできており、全ての人間はアルコール依存症に陥ったまま生きていたのです。

 その惑星の人類は、お酒に強いグループと、弱いグループに分けることができました。お酒に弱いタイプは10人に1人くらいの割合でいました。

 弱いタイプの人は、子供の頃から周囲と足並みを揃えることができず、生きづらさに苦しんでいました。周囲と違い、自分だけがいつも調子が悪く、何をやってもケアレスミスが頻発し、コミュニケーションの感覚もおかしくて、あらゆることの習得に遅れが目立ちました。

 お酒に弱いタイプの人たちの境遇は、原因不明の障害として認知されていました。
 その惑星の医学は彼らの症状を、「発達障害」と名づけていました。

 


 宇宙船からその惑星を見ているあなたは、きっとこんなことを思うのではないでしょうか?

 原因は毎日摂取しているアルコールの成分にあり、アルコールの摂取をやめない限りこの問題は永久に解決しない、と。
 しかし、全ての水分の成分がアルコールでてきている世界ですから、彼らはきっと、アルコール依存症ではない状態を知らないまま生きて、繁栄してきたわけです。

 どうやって彼らに理解させようか?
 もし理解させられたとして、どう対策するべきだろうか?

 と……。

  あなたに医学知識がなくても、お酒に酔っぱらってない、素面の状態を知っていれば、それくらいのことを考えることはできるでしょう。

 

 では、現実に戻りましょう。

 おさらいでお伝えした通り、依存症の原因となる要素は物質依存と非物質依存に分けて捉えることができます。これは私個人の考え方ではなく、依存症分野の標準的な解答です。

 私たちが赤ん坊のころから無意識に習得してきた言語も、非物質依存に分類できると私は考えます。つまり、言語を要因とした依存症があり、その影響や症状の受けやすさの強弱にも個体差もあるはずで、それなら、言葉を習得し使用している影響により、調子が悪くなる人がいると推測できます。

 この自論の補強、とまでは言いませんが、ある論文によると、アルコールの影響と音楽の快感は同じ領域で起きているそうです。

音楽の快感は「アルコールと同じ脳領域」で発生している - ナゾロジー
音楽の快感は、アルコールや薬物と同じ脳領域で生じていることが判明しました。 カナダ・マギル大学の神経科学研究チームは、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)とTMS(経頭蓋磁気刺激)を用いて、脳内におけるポップミュージックの影響を調査。 脳の報酬...

 私にはこの論文の評価ができないので具体的な話をすることができないのですが、科学的に確認されたことに意味があることで、そもそも音楽を楽しんでいる時の意識のコンディションを俯瞰的にみれば、それがアルコールの影響と似ていることは想像難くないです。

 ここで考えたいことは、音楽を〝耳から入る刺激〟というふうに見方を変えれば、音楽に限らず自分や他者の言葉でも同様の影響を受けているのでは? それなら、耳からではなくても意識の声でも同様の影響があるのでは? という仮説です。

 これが成り立つならのなら、言葉の影響により人は大なり小なり飲酒に相当する影響を受けているというイメージが持てるでしょう。

 その上であらわれる症状や境遇は? 現代でいう、発達障害の症状がイメージできるのではないでしょうか。

 


 ではまた、架空の話をします。 

 遠い宇宙に、地球そっくりの惑星がありました。私たちの生きている地球とほとんどが同じですが、1つだけ違うことがあります。

 その惑星の人間は、遥か昔に言語の使用をやめたのです。言語が依存症状を招き、一部個体のパフォーマンスを著しく低下させることが判明したので、全体の生存率、社会適応率を上げるために、言語とは別の方法によるコミュニケーションを確立させました。

 なんと彼らは脳のテレパシーで、イメージを丸ごと送受信できる感覚機能を獲得したのです。

 そんな文明の惑星に生きる人間が宇宙船にのって、ある別の惑星を観察していました。
 それは、私たちの地球でした。

 その人間が私たちの発達障害問題を観察した時、何を思うでしょうか?

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