サリーとアン課題
この課題は、1988年に心理学者のバロン=コーエン(Simon Baron-Cohen)らによって考案されました。
自閉症スペクトラム障害をもつ子どもたちが、「誤信念」をどのように理解するかを調べるために開発されたものです。
「誤信念」とは他者の誤った信念のことです。例えば、あなたがある出来事について、事実Aが事実Bに変化したのを知っているとします。しかし、他人である太郎さんは事実Bになったことを知らず、いまだに事実Aが正しいと思い込んでいます。このとき、太郎さんは誤信念を抱いていると言えます。
一般的には、人は「自分が知っていること」と「相手が信じていること」は必ずしも一致しないと理解できます。しかし、自閉症スペクトラム障害の特徴を持つ人の中には、このような「相手が誤信念を抱く可能性」を想定することが難しい人がいます。そのため、他者の行動や言葉を理解するときに、すれ違いが生じやすくなるのです。
このテストでは、「サリーがボールをどこで探すと思うか?」を聞いています。
回答者は「アンがボールを移動させた」ことを知っていますが、サリーはその場にいなかったため、その事実を知りませんから、サリーはボールを「自分が最後に置いた場所=カゴの中」にあると思っているはずです。
したがって、正解は(1)カゴの中です。
しかし、他人の考えと自分の知識を区別するのが難しい人は、自分が知っている事実をそのまま当てはめて(2)箱の中を選んでしまうことがあります。
このような視点の切り替えや、他人の信念を想像する力は「心の理論」と呼ばれます。
通常は4歳ごろに自然と身につくと言われていますが、発達の個人差や環境によってタイミングが異なる場合もあります。
サリーがボールをカゴの中にあると理解できないことは、決して「問題がある」わけではありません。発達のペースや経験には個人差があり、理解が難しい場合もあります。しかし、そのままの状態で社会生活を送ると、他人の気持ちや考えを推測しにくくなり、対人関係で困難を感じるリスクが高まるため、必要に応じて専門家の支援を受けることが大切です。
現実問題として、この「誤信念」の理解の欠如は、発達特性に限らず社会人の場面でも見られます。例えば、業務の内容が十分に周知されていないにもかかわらず、上司の中には自分と同じ水準で理解していることを前提にしか考えられない人がいます。その結果、情報不足の従業員について「使えない」と評価してしまうことがあるのです。
サリーとアン課題は、心の理論の分野の中でも特に有名なテストの1つで、Google検索でも関連情報が豊富にありますので、ご自身にあった解説を探してみるのもいいでしょう。
私が初めてやった時
この問題を知ったのが、たしかレストラン課題をネットで見つけた時とほぼ同時期でしたから、二十歳前後だと記憶しています。
レストラン問題では長考した挙句、適切な回答を選べなかったのですが、この問題は迷わずカゴだと認識できました。
ただ、なんとなくですが「小、中学生頃の自分ならわからなかったかも」という気がして、回答後もモヤモヤしたのを覚えています。
子供の頃の私は、発達的言動のこともあり、とにかく日常的に親から怒られるという境遇でした。しかし、なぜ怒られるのかが理解できないことも多く、「なんでこうした!?」「言いなさい!」という叱られ方をよくされました。
いつから、知っていることは黙っていると怒られるという意識が無自覚のまま根付いてしまい、知っていることはなんでも誰かに話そうとするキャラになりました。
自他の区別も全くといっていいほどついていない状態で、自分の言動のせいで周囲が混乱したり怒ったりしたのを覚えています。ですから、サリーとアン課題も答えられたとは思えないのです。