字を「書く」時の感覚を「置く」に変えた

 発達障害の症状を改善できてから、それまで気にする余裕のなかった自分の苦手が気になるようになりました。字の下手さもその1つです。昔はアルバイトの面接一つに履歴書を何枚も書き直しました。

 今の私は警備員の仕事をしていたのですが、報告書に書く自分の字の形がどうしても安定しませんでした。

  漢字練習帳も買って練習しました。いろいろ改善できた今の自分ならちゃんと習得できるかも、と思ったんです。でも〝とめ・はね〟が大事なことがわかり、ちょっと上手く書ける頻度が上がっただけで、やはり字の形は安定しませんでした。

 これを解決するヒントとなったのが、とあるベテラン隊員の誘導棒の振り方でした。そのベテランさんの誘導は、停止の合図(誘導棒を横にする)の時は見えない壁が見えますし、進めの合図(誘導棒を進行方向に向けて振る)の時は、見えない矢印が見えるのです。

 その人の動きを2~3ヵ月くらい、意識して真似し続けてわかったことが、「パントマイム」の感覚でした。

 パントマイムといえば、手の平をなにもない空間にぺたぺたと置き、あたかもそこに壁があるように思わせる動きが有名でしょうか。ベテラン隊員の誘導棒を振る動作はそれと同様の感覚で、位置Aに置いていた誘導棒を位置Bに置き換える。つまり「振る」ではなく「置く」「置き換える」という動作で見せていたのです。

 これに気が付いてから私の誘導棒の操り方も安定し、より自信がつきました。

 で、この気づきのあと、いつものように報告書を書いた時、ふとこの「置く」という感覚に注目して、字を書く時にも意識してみたのです。

 字を書く時は、線を「置く」……二文字目を書く時は、一文字目の隣に「置く」……そのつもりでまた、線を「置く」……というイメージです。

 

 やってすぐに良い感触が得られました。今までどうしてもわからなかった「字を書く時の安定感」がやっと感じ取れるようになったのです。

 この気づき以来、いつも「置く」を意識して字を書くようにしています。不便はなにもありません。いつも整った字が書きやすくなったので、字を書くことも楽しみになりました。

 私が思うに、この「置く」という感覚はもっと他に使えるのではないかと思います。そもそも「書く」は行為のことであって、脳の働きのことではありません。

 このケースのように、発達障害の人は使う感覚を誤認してるケースがあると思います。苦手なことと向き合う時は、別の感覚を使ってみてください。

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